矢吹原土地改良区の取り組みを視察-節水型農業で次の時代へ

「乾いた大地に種をまき、水を張らずに稲を育てる」 これまでの農業の常識を覆す挑戦をしている方々が福島にいます。
私の地元の矢吹原土地改良区の皆さんは、羽鳥湖の水を稲作に使っていましたが、近年は水不足に悩まされています。また、地域の農地の担い手の減少も大きな課題です。このような課題に対処するために着目されている栽培方法が「乾田直播」です。

これまでの米作りは、土をおこした後に水を張ってならし、育てた苗を植え、秋の収穫まで継続的に水の管理を行ってきました。 一方で、「乾田直播」(※)は、耕した土に直接種をまき、水を張らずに稲を育てるため、やり方によっては繁忙期の労働時間が7割減(機械コストも6割減)、使う水も少なくて済みます。この日は、乾田直播に挑戦する佐藤幸一郎さんの田んぼを見学し、皆さんから現状の取組や課題を教えていただきました。乾田直播は、作業時間が大幅に減る一方で、水を張らないと雑草が生えやすくなるため除草技術も必要となり、足りなくなる養分を補う必要もあります。 また、水不足にならないよう、成育状況に応じて、田んぼに水を流すことも求められます。

このように、高い技術力が求められる乾田直播ですが、実際に佐藤さんの田んぼには青々と稲が育っており、通常の水田での栽培よりも発育状況が良いくらいとのことでした。 一方で、乾田直播は技術が確立しきっていない部分があります。誰でも乾田直播ができるようになるためには、佐藤さんが長年の経験に基づいて行っている管理を、理論化・マニュアル化する必要があります。また、除草技術や養分を補う技術も発展しており、これも取り込んでいかなくてはなりません。
「水を張らずに稲を育てるなんて無理だ」 担い手が減少し、気候変動に立ち向かわなければならない農業を発展させるためには、そんな常識を打破していくことが求められます。
矢吹原土地改良区の皆さんの次の時代の農業を切り拓くための取組を、心から応援しています!
※正確には「節水型乾田直播」と呼ばれる技術で、播種の後、田んぼに何度か水を流す方法もあれば、雨水だけで育てる方法もあります。
乾田直播については先日、小泉進次郎大臣が、郡山市の楪(ゆずりは)園芸さんに視察に来てくださりました。

楪園芸さんは、耕作放棄地となっていた土地を再生させ、稲の種を直接播いて、その後は水も張らずに雨水だけで稲を育てます。それが信じられずに参加した私に、楪園芸の柏原さんが言った一言が、「拓さん、うちの田んぼは長靴じゃなくてサンダルで来てくれていいんだよ笑」。実際に農地に入ると、土はふかふかで、稲がすくすくと育っていてびっくりしました。その後の懇談会では、ここまでの技術を確立するまでのご苦労を伺いました。 一方で、進次郎大臣からは、「乾いた土地で稲を育てられると言っても真に受けてもらえない。
だからこそ、柏原さんたちには、それができるんだということを見せて欲しい。」という激励の言葉がありました。 楪園芸には、孝輔さんと尉秀さんというやる気ある若手の後継者がいて、未来も明るいです。 福島は次世代の新たな農業の発信地となります!
 
 









